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la souvenir

Posted on 2021.07.30

新しい「街」

下北沢。
東京に住んだことがなくても、いいイメージとして
耳に馴染む街のような気がします。
学生時代 (え、もう40年も前のこと)、美術を学ぶ仲間に連れられ、
何度となく通った「ジャズ喫茶マサコ」。
駅をおり、踏切を渡り、「マサコ」に向かう時間は、
未知なる大人の世界に近づくような高揚感。
扉を開け、薄暗いけどまったりとした空気にとろけ、
よくわからないジャズを聴きながらコーンスープ飲んでた。
不思議なことに下北沢の「マサコ」、そこしか覚えていない。
マサコママのマジックだったのだろうか。
そんな思い出の街界隈に誘われた。
週末しか開いてないけど、絶対に気に入るから!と
エスコートしてくれた友人の瞳はすでにキラキラ。
静かな街の一角にあるブルーグレーの扉を開くと……
おっしゃる通りのワンダーランド。
超直球で胸を衝く。
見たことのあるものが、見たことのないアプローチで所狭しに溢れている。
ひとりの「アーティスト」の視界にはまる、あらゆる形あるものが
行儀よく幸せそうに寄り添いあい、
鎮座している空気がとてもピュアでなんとも清々しい。
人によっては out of order、一方でheaven。
彼はきっとシャーマン。会えたことがミラクル。

胸の鼓動を抑えながらワンダーランドを後にする。
気になる店構えの写真を撮りながら、駅に向かって歩く。
小田急電鉄が開発する新しい街づくりがなかなか面白いよ! 
わたしの頭の中には「マサコ」しかないけど、
上京前から聞いていた噂の街に向かう。
駅の開発というと四角い箱をドーンと建てて、流行りの店舗を誘致して、
駅の中で街の商業を席巻するイメージが強い。
さてどうなのか。
代田駅前をテクテクと歩いていると涼しげな植栽の小径に入った。
現れたのは悠然とした日本家屋。いきなり旅館。
雅な暖簾をくぐるとお茶屋さん。一服するしかありません。
「都心に山里のくつろぎを。」
いただいたパンフレットに記された一行。まさにその通り。
箱根の源泉から運んだ温泉の露天風呂付き大浴場があるとか。
「由縁別邸 代田」UDS社、お見事。
お茶を淹れてくれた優しいスタッフに見送られ、
小径を先に進むと「世田谷代田 仁慈保幼稚園」の看板。
カッコイイモダンな建物、これが幼稚園?と覗いたお部屋にいた子供たち、
全員がクリスタルチルドレンたるお顔つき。
幼稚園があるからか、若いママやファミリーの姿が多い。
のどかな散歩道。そんな感じ。
空間が広がった。広場の名称「BONUS TRACK」。そこには
恋する豚研究所、発酵デパートメント、月日( )、
本屋B&B、TENTOのTEMPO、OMUSUBI 不動産、etc…
店舗のネーミング、ロゴ、働く人も、何もかもがインスタ映えする洒落具合。
街に新芽が息吹いている。若い人はたまらなく楽しいだろうなあ。

下北線路街。沖縄に戻ってきてホームページをチェック。
小田急電鉄がテーマにしたのは
「支援型開発=サーバント・デベロップメント」。
“何かを変える”のではなく、開発を通じて街を“支援する”。
まだその地域に「ないもの」を届けることは意識しつつも、
既に「あるもの」を見つめ、より深めたり、よりつなげたりと、
さらなる発展を支援する。
開発はゴールじゃない。ゴールは地域のエンゲージメント(愛着)を育むこと。
価値をもたらす主体は地域のプレイヤー。
わたしたちが愛するコザも、形違えど、
そんなスタイルが育まれつつあるように感じる。