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la souvenir

Posted on 2021.06.30

時代

「貴茶」と書かれた封をきる。
緑色の美しい茶葉とともに豊かな薫りが広がる。
あっという間に沸いたポットのお湯を注ぎ
ふっくらと手に馴染む湯呑み茶碗を口元に近づける。
幼いころは当たり前に淹れていた日本茶。
家族一人一人の湯呑み茶碗がなんとなく決まっていて
それぞれの席にお茶を配ることが毎朝の務めだった。
そんなことを思い出しながら、
いつもと違う朝の始まりに少しゆらぎながら自分自身を整える。
カーテンを引くと渋滞する車道を挟んで、目の前に江ノ島、湘南の海が広がっている。
不思議なもんだ。
ちょっとしたやりとりと、ちょっとしたタイミングが相まってまさかの場所にいる。
海辺を散歩する老人の背中に朝日が注ぎ、追いかける子犬の姿にほっと寛ぐ。
毎日が旅なんだ。

日本茶と一緒に用意された上等な茶菓子。
ほどよい甘さに気分をよくしながら、一昨日のオフィスの喧騒が蘇った。
ひとりのスタッフの辞意が巻き起こした嵐。
数十年も続くサービスステイタスがいきなり混乱に陥る。
精密に動く機械のネジがピンと弾けていきなり静止するような感じ。

起きてはならぬ事態に周りが振動する。
普段会話の機会がないチームとの連動が始まる。
危機は真剣さを誘い、積極的な議論が続く。
曖昧な意見はすぐに修正され、次々と具体的な案が浮上する。
混乱しているはずのチームがどこかで結束を始めている。
粛々と仕事に従事する、どちらかといえばおとなしい彼が見事に舵取りをしている。
起きてはならない事態が起こす起動があるのか。
本気のコミュニケーションが垣間見える。
弱気と強気が交差する舞台で
みんなが主人公になって役割を果たす。
身体に潜む不調や心配事をほったらかさずに
きちんと養生して健やかになろう。
そうでなければいけないことを神様が教えてくれているのか。

真実がどこにあるか分かり難い時代、
それでも次々と選択に迫られる毎日。
右に行くのか、左に行くのか。
創業のときから静かに鎮座する神様と目があった。
また新しい時代が始まる。
日本茶がひときわ美味しい。