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Posted on 2019.10.31

画家

ダビッド・スアレス・ベラスケスさん

人へ還る旅。

「人生は“自分とは一体何者なのか”という究極の真実を探す旅と言えるでしょう。〜中略〜私にとってのアートは、人間の真髄を知るための旅に必要な道具の一つです」
(David Suarez Velazquezポートフォリオより)。
キャンバスの上に漂うそれらの色の名も定かでなく、曲線のように波のように軌跡をたどりながらゆっくりと私たちの心の中へ浸透していく。抽象画、と言ってしまえば易いが、色たちはあたかも動いて、感触さえあるのではと錯覚する。まるで、それ自体が生きているかのように。

画家であるダビッド・スアレス・ベラスケスさんは、メキシコの中央部に位置するケレタロ州で、なんと12人兄弟の6男として生まれた。標高が高く、空は広く、緑豊かな大地でのびのびと暮らす中で、子供たちは自然と創造の知恵を育んでいった。幼い頃から年も様々な家族の生き様や感性に刺激され、影響を受けていくうちに、自律する心、挑戦すること、そしてちゃんと自分で内面の幸せを追求することを、良く生きる術として体得したのだろう。画家でありたいと決意し、本格的に技法や学術を模索しながら、次第にかの地の芸術に魅了されるまま旅をはじめたのは19歳の頃だった。
「旅先で風景の線や色彩を眺めるたび、生きることの本質が見えるように思えた」
アメリカ、カナダ、フランス。故郷と異国を行き来しながら出会う風景を忠実に描写した。それは陽の光を浴びて反射する葉や水面、澄んだ空気が肌に伝わるほどの具象的な風景画の数々。展示会を開催する各地で高い評価を得た。
フランスはパリで過ごしていた際、のちに結婚することになる沖縄出身の女性と出会った。ワーキングホリデーで渡仏していた彼女―涼子さんは、あと2週間で帰国するというタイミングだったという。ふたりは迷いもなく結婚を決意し、2015年から沖縄に暮らし始めている。今年4月には最愛の息子も生まれた。
「故郷と風習も言葉もかけ離れた環境で、挑戦に満ちた沖縄の日々が、僕にとっては魅力的に感じます。変化に魅了されていると言ってもいいかもしれない」。
驚き、悩み、幸せ、疑問。感じ、考えること。ダビッドさんは自らの感情をキャンバスに描く。近年手がける作品はより抽象に傾倒し、彼の心象が純粋なままに描写され、鑑賞する私たちの感情を様々に喚起させる。
「自分の創作について口数多く説明的になるのは気が引けてしまう。作品は私の意志や題材から自由に飛び立って欲しいし、答えは見る方々それぞれにゆだねたい」
彼は作品が、人々の感情と繋がってそれぞれが内面を発見するきっかけになればと願う。
「私たちの経験すべてに価値があると信じている。それを語り継ぐという大切な使命を、私は描くことで果たしていきたい。大それた目的地なんて考えていない。ただ、旅のように新たなことが連続する人生の中で学び続け、動き、変化することに、真の豊かさを見出したい」
沖縄に移住後初となる個展は11月10日まで開催中。彼が数年をかけて手がけた12枚の作品に、ぜひ時間をかけて向き合っていただきたい。作品は鏡のように感じるかもしれないし、不思議なことに、いつか見た風景を思い出すこともあるかもしれない。あるいは私的な未来を感じるのかもしれない。いずれにせよきっと、私たちは深くゆっくり内面へと旅する原点を、感じることができるはずだ。

1986年メキシコ・ケレタロ州生まれ。18歳より画家として国際的に活動し、これまでメキシコ、アメリカ、フランスにて作品制作、展示の経験がある。身近にある自然や素材を忠実に捉えながら独特かつ大胆な生命感を表現する作品が評価され、パリやメキシコの教育機関が実施する環境保全活動イベントより作品展示の依頼を受けている。2016年より活動拠点を沖縄に置き、平成27年度沖縄県芸術文化祭において油絵「アダン」が入選。沖縄県立博物館美術館にて展示される。