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Posted on 2022.04.29

墨がもたらす漆黒なる醍醐味 / BLUE ZONE LIFE LESSON

BLUE ZONE LIFE LESSON
健やかに、生きがいを持ち長寿を喜び讃える人々が暮らす世界5つのゾーン、“BLUE ZONE”。
このページでは、“BLUE ZONE”のスピリッツを彷彿とさせる
県内外、国内外のFOODに関わるステキな出会いを綴ります。

ARROZ NEGRO
(アロス・ネグロ)
墨がもたらす漆黒なる醍醐味
 
漆黒の宇宙に輝く銀河を思わすarroz negro (アロス・ネグロ)はカタロニア地域を代表する郷土料理。イカ墨と香辛料を生米に和え、エビとイカを散りばめ蒸し焼きにする。初めて見た人は驚く黒光の墨、そのイカ墨を料理し食す地域は地中海と日本が主だという。

イカ墨を食べる文化をイエズス会の宣教師が1500年代に琉球、長崎、能登半島にもたらした。能登の“イカの黒づくり”、長崎の“イカの黒みあえ”、琉球の“イカ墨汁”となり現在においても貴重な郷土料理として根付きました。

美味しくしてくれるのは魚介類だけではなく、カタロニア南部 - タラゴナ地域に20,500ヘクタールにも広がる自然の地形を保った田園地帯、Delta de l’Ebre(エブレ湿地帯)の恵。壮大な湿地帯では、特有の在来品種米6種が生産されるスペイン・ガストロミーを支える重要な地域。Delta de l’Ebreの栄養豊かな環境がarroz negroに欠かせない、真珠のようなボンバ米を育んだ。ボンバ米は炊いてもサラサラで、自量の2倍から3倍の液体を吸収するためイカ墨の旨味をそのまま口に運んでくれる。

20代のころ、沖縄の長寿研究に従事する教授と共に島の百寿者をヒヤリングして回ったことがある。その方々は共通して、長寿の秘訣とは、”自然と共に生かしてもらっている。だから、お天道様に感謝”と話してくれた。その多くは畑や海に行き、恵を収穫し家族を喜ばせることを楽しんでいた。カタロニアも長寿圏の一つ。両地域は自然への感謝、陽気かつ多様性を受け入れ特有な文化を誇り継承する気質も似ている。また、イカ墨を食することも長寿を保つ要因のひとつかもしれない。イカ墨はアミノ酸の宝庫で、抗菌作用や整腸作用、血行促進、細胞の再生など身体の回復に役立つと言われ、沖縄では産後に最初食し、疲労回復を促す薬膳料理としても継承されてきた。

私は思う。食文化は人が交流した道なき道を辿る道しるべ。一つ一つの食事を解くと見えてくる、聞こえざる歴史。それを紐解きながら味わうと、美味しさの向こうから、語られることなき人々の物語を味わえる。沖縄の食文化は貿易国家として得た宝、カタロニアも同様。地中海と東シナ海を海流にのって世界各国の美しいもの、美味しいもの、高価なものを八方に流し、取り入れてきたからかもしれない。近い将来カタロニアに出向き、貿易国家の名残を目と口で味わってみたい。
 

濃厚なイカと海の幸だし。イカ墨のコクもしっかりと。カタルーニャの名物料理といえばイカ墨のパエリア。
イカ墨パエリアのカルド 1000mL ¥2,484
ANETO/スペイン

イタリア産の大粒品種カルナローリ米は香りが豊かで煮崩れしにくく、程よい粘り気がある。リゾット米やボンバ米がアロスネグロに適している。
イタリア産リゾット用
カルナローリ米 180g ¥756
MONTEBELLO/イタリア

【材料】
頭つきのエビ 500g、イカ250g、米 400g 、
パエリアカルド ARROZ NEGRO 1箱、
オリーブオイル 30mL、
みじん切り ●玉ねぎ 1/2個 、●トマト 1/2個、
●ニンニク 10g、 ●パセリ 7g
レモン 1/2個

【作り方】
1. みじん切りにしたトマト、玉ねぎ、ニンニクをオリーブオイルで玉ねぎが透明になるまで炒める。
2. 別のフライパンでイカとエビの表面を焼き、バットで冷ます。
3. 1. の鍋に、パエリアカルド1箱を入れ煮る。沸騰したら米を十字に入れ、木べらなどで平らにし、強火で焦げないように中心部を混ぜながら6~8分程火を入れる。
4. 水分が残る状態で、イカとエビを入れ、更に強火で2~4分程。水分が引いたところで全体を平らにし、弱火で8分。
5. 火を止め、アルミホイルなどで蓋をし、10分程蒸らしたら完成。
6. 仕上げにパセリをふりかけ、お好みでレモンをかける

 

ガストロノミスト(農食文化・環境社会学研究家)
伊江 玲美
1976年東京生まれ、ルーツは沖縄、幼少期をアメリカで過ごす。2005年にスタンフォード大学にて持続可能な発展途上地域開発と起業論を研究。帰国後、一次産業と食文化を統合したコンサルティング会社を起業。2012年にブータン王国のGNH Center(国民幸福度を考えるセンター)の日本大使に任命される。2015年、イタリア食科学大学にて修士号を取得し、Slow Food 国際本部アジア局日本ディレクターに就任。活動は日本の食文化、食の叡智の発信、農業・漁業継承の促進、また恩納村を中心にフードロス食材を活用した無料弁当を子供達へ提供。