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la souvenir

Posted on 2020.10.03

Dear Catherine,





わたしがあなたと出会ったのは、もう25年も前、東京でのことでした。
少し視野を広げ新しいブランドを探す必要はないでしょうか? と生意気にも当時の上司にお願いして上京した、わたし。
数々のキャリアを積んで、ご自身のブランドを立ち上げ、日本のマーケットに強く興味を抱いて来日した、あなた。
記憶ではホテルオークラ。ホテルの一室をショールームにして、バイヤーをお招きして商談するスタイル。
初めての経験はいつもおっかなびっくり、そのうえ同行した先輩も不慣れな環境に少々ご機嫌斜め。
聞こえてくるフランス語に高揚はしつつ、ちょっと早まったかなあとそれぞれの部屋を回りながら焦るわたし。
フロアの一番端のお部屋にあなたはいました。
幸いにも通訳の方がとても親切で、旦那さまと団欒するあなたの部屋にスムーズにわたしを導きました。
お互いに軽く会釈を交わし。旦那さまはそそくさと違う方向へ。
目の前に現れたあなたのコレクションを見た瞬間、わたしはあまりの感動にうろたえ、涙さえ。
恥ずかしくてその場を退去、先輩は不思議そうにしながらも、素敵だけど高価すぎるので仕入れは無理と判断。
相槌を打ちながら、胸の鼓動を手で押さえ、沖縄にニットは無理ですよね、と。
それなのにわたしは、幾度もフロアの一番端の部屋の前に佇み、あなたと接しお話しすることを望んだ。
あなたと、あなたが創る世界に心を奪われ、わたしは十分に恋に落ちた。
それからわたし。直接あなたに会いたくて、またもや上司を説き伏せて、まずは自費でフランスへ飛んだ。
少し広げようと思った視野には、溢れんばかりの刺激と情緒と浪漫が飛び込んできた。
ファッションは単に纏うものではなく、心に宿る思想や情熱、思い出や歴史を織り込んでいく表現の賜物だと教わる。
春夏、秋冬、年に二回。あなたは全身全霊をかけて、あなたの分身を創り出し、惜しげもなく世に届ける。
様々な太さ細さ、素材の持つ弾力や輝き、満ち溢れる美しい自然から届く色をあなたの感性で染め上げ、
力を秘めた一本の糸と糸を、まるで魔術師のように編み上げる、あなた。
そしてかならず添えられるコレクションの物語。
限りなく溢れるあなたのインスピレーションはどこから? どうやって?
優しい笑みを浮かべ、目を輝かせながら、静かに話すあなた。
“音楽は欠かせない、バロックが好き。書籍はジャン=ルック(ご主人)が手元に届けてくれるわ。
映画を見るとその裏側にある物語を自分なりに探す。古いものがとても好き。歴史を読み解き自由に妄想する。
旅はもちろん。沖縄のスピリッツはどこにいても感じている。コルシカにある小さな家は潜り込む場所。
パリは便利だけど、Millau (ミヨー 南フランス) にあるスタジオと、家族と過ごす家がよりどころ ”
美しい庭と果樹園。朝は卵を採りにいき、焼きたてのパンが届く。わたしはあなたの家にいた。

ワインを一緒に飲みながら、シャンピニオンをラギオールのナイフで刻み、グリルで肉を焼く。
ジャン=ルック自慢のフォアグラがテーブルに運ばれ、かつてはお城だったその家の浪漫が夜を長くする。
置かれた家具。並んだ楽器。旅の記録。拾ってきた石ころ。深い色のベッドカバー。何もかもに魂が宿っていた。
わたしがそうだったように、あなたは静かに多くの人たちを魅了する。
その功績は国にも認められ2011年レジオン・ドヌール勲章シュバリエを受賞。
その後活躍はコレクションに留まらず
建築のノーベル賞と言われる2017年プリツカー賞を獲得したRodez (ロデズ南フランス) にある
スーラージュ美術館のユニフォームを手がけ注目を浴びた。
さらにミシェル・ブラス(自然から料理を創作する料理人と称され21世紀のフランス料理界を代表するシェフ)の強い希望のもと、
新しく計画されているパリのレストランのユニフォームも現在制作中である。
そんなあなたがいつもと変わらず沖縄を気づかう。
会えない日々を乗り越えてよりたくさんの想いが表現できたかも、と来春のコレクションにコメントするあなた。
いつもより茶目っ気溢れる笑顔から、あなたが次なる光を見出したことを知る。
あなたに憧れ、あなたのようになりたいと願ったわたしは、いつの頃からかあなたと同じ髪型をしている。
二人して写った写真を前に、エボニー(わたし)、アイボリー(あなた)と呼び合うようになった。
わたしの黒髪には少しずつ白いものが増え、いつかはきっとあなたと同じ色になる。
それでも共に時間を歩むことができるなら、あなたを待つ沖縄のたくさんの友人とまた語り合う機会をつなぎ、
わたしはあなた自慢のコルシカの小さな家で編み物を習う日を夢見る。
あなたから届いた夢の糸を、ほどくことなく紡いでいきたい。


来沖を断念せざるをえない状況下で、
私たちはカトリーヌ アンドレ スタジオと沖縄ロージャースをウェブで継ぎます。


フランス・カトリーヌアンドレスタジオとロージャースをつなぐ
カトリーヌアンドレ Webサロン SPRING - SUMMER 2021 COLLECTION
10月15日(木)・16日(金)・17日(土)
午後5時 (フランス時間 午前10時) より ロージャースジャルダンにて

世界が注目するジャカード織デザイナー「カトリーヌアンドレ」、2021年春夏新作コレクションのサンプルが
フランスよりここ沖縄へ到着。フランスと沖縄がオンラインでつながり、Webサロンを開催します。