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la souvenir

Posted on 2021.10.01

Curiosità

はじめてのイタリアだった。
もちろん最初に食するのはパスタ。
三人でテーブルを囲んで、まずは現地のビール!
陽気なシェフがメニューをテーブルへ。英語表記いっさい無し。
周りを見回すと全て地元の人たち。英会話、いっさい聞こえず。
大丈夫。とにかくパスタを注文しよう!
俺アラビアータ、わたしカルボナーラ、僕はペペロンチーノ!
カタカナ発音でしっかり伝えたら、見事にオッケー!と手をあげキッチンへ戻ったシェフ。
しばらくすると大きなお皿に盛られたスパゲッテイー二皿が目の前へ。
さあさあ、すぐに食べましょう! 
ペペロンチーノを待たずに、塩分の効いた本場の味に舌鼓を打つ。
しかし、もう一つのディッシュがなかなかこない。
心配になってシェフを呼んで、
彼がペペロンチーノを頼んだけどまだこないと身振り手振り。
シェフはキョトンとした様子で、テーブルに置かれた小さな皿に乗った唐辛子を指さす。
(ペペロンチーノ、あるよ、そこに、という感じ)
そしていきなり笑い出し、手を叩いて、大声で
パスタ・ペペロンチーノ! パスタ・ペペロンチーノ!と叫びながらキッチンへ。
数分後、ニンニクとオリーブの香り高いアーリオ・オーリオ・ペペロンチーノが僕の前へ。
あの時のあの情景、いまだに笑う語り種。

今月の旅先はミラノ。
かれこれ20年以上通っているロージャースにとってかけがえのない出会いの場所。
前述のシーンは、それまで香港で行われていた商品調達を
直接生産地で実施することが可能か、
かつての上司の反対を押し切り、ならば自腹で行くしかない、と英語のできる主人を誘い、
ついでに入社したばかりの弟を連れて出かけた時のこと。
街中では思った以上に言葉が通ぜず、日々面白おかしいトラブル発生。
しかしビジネスの場はとんでもなくリッチ。
見本市会場には世界中から集まった靴のブランド勢揃い。
見渡す限りどこまでも靴、靴、靴。

とんでもない量ゆえに、どうやって選べばいいかわからない。
これまで取引のあったブランドをカタログから探し、挨拶に行く。
香港を飛び越え、わざわざここまでやってきたのか!と
驚かれ、喜ばれ、半分呆れられながら
会場のゾーニング、そのコンセプトなどを教えてもらい少しずつ状況把握。
靴の見本市とはいえ、周りみんなおしゃれな男女。
同業のバイヤーと思われるオーラ漂う人の後をついていったり
あなたのその靴どこのブランド? 君のそのシャツ、メイド・イン・イタリー?
なんて質問を繰り返しては情報収集。出かけた先々で次につながるネタを探る。
当時は日本人も少なく、そのうえ沖縄から来たといえば、それなりに相手に覚えてもらえる。
これはとても大事なこと。ラテンの血は沖縄のイチャリバチョーデーなのである。
毎日ヒヤヒヤしながらも
エスプレッソ、パニーニ、ルッコラ、パルミジャーノ・レッジャーノ、そんな楽しみを覚え、
メトロに乗る時スリに注意、
ドゥオーモ広場は特に狙われやすい、など歩き方にも注意が備わる。

商品現地調達の極みは、創る人たちと繋がっていくこと。
そしてそこには優秀なトレンドセッターがいる。
独自のコレクションを持ち、新たなブランドやデザイナーを発掘し
我々のようなバイヤーに紹介する。
ミラノにはそんな人たちがショールームを持ち、
そこでは、創り手、売り手、買い手の共鳴がエネルギッシュに行われている。
彼らの興味はファッションに止まらず、二十四時間の生き方に対してしなやかである。
有り難いことに、大きな発注に至らない我々と
長きに渡って付き合ってくれているブランドが多々ある。
言葉流暢なスタッフが加わったことで、
より一層豊かな繋がりが生まれ、大きな学びをいただいている。
さらに沖縄チームに可愛いミラネーゼが加わった。
最強である。
コミュニケーションはさらに人間らしく、感情豊かに取り交わされるに違いない。
ロージャースがますます美しく、おいしく、興味あふれる場所になるに違いない。