Posted on 2025.09.30
久しぶりに出かけたアメリカから戻り
落ち着く間もなくヨーロッパへのバイイングが始まった。
航空運賃や滞在費の高騰で以前のようにチームで出かけるのは容易ではない。
WEBミーティングによる発注も可能だけれど
動けば動くだけ出会いがあり、学びがあり、美しいものを眼に刻むことができる。
ロングフライトで縮んだカラダを伸ばし、
キッチン付きのアパートメントホテルで、
朝は味噌汁とパックの玄米を温め梅干しで頬張る。
近くのスーパーで卵とベビーリーフサラダのパックを足してパリの生活感を楽しむ。
ロージャースの買い付けは、ほぼほぼ自店の品揃えのため。
支店はナハテラスのみ、卸先は県内のホテルショップを厳選。
それでも取り扱いジャンルが多岐にわたるため、目が回るほど歩く。
限られた時間の中でさまざまな取引先と合流し、発注数を決めていく。
ベテランバイヤーの時間の割り振りは見事で
本人の嗜好に固執することなく、振り幅大きい判断を
恐ろしいほどスピーディーに、スマートにこなす姿に取引相手は驚き、拍手する。
直接現地に出向き、直接輸入をする。
日本では知られていないブランドが多く、しかし現地での評価は比較的高い。
仕事の合間にベンチマーキングする場所、
例えばニューヨークのバーグドルフ・グッドマンや、パリのボン・マルシェ。
そんな場所で、ロージャースに並ぶ同じ商品を見つけると、とても嬉しい。
どこかホッとして、バイヤー同士肩を叩き合い、
よし頑張ろう!と気持ちを高める。
年に二度、われわれは無謀かつ勇敢なチャレンジャーになる!
大都市パリからミラノの定宿へ。
旧知のホテルマンに出迎えられ緊張がほぐれる。
ハムやチーズやフルーツが豊富に並んだホテルの朝食から一日が始まり、
宿泊費も物価もパリより少しやさしいので、夕食のレストランをリストアップ。
少しだけ贅沢な気分を味わおうと張り切る。
ミラノではレザーメイドのシューズ&バッグを中心に
イタリアらしいトラディショナルなファッションや
小さなスタジオで作るコンパクトなコレクションを選ぶ。
ミラノ市内に点在するショールームを訪ね、
また新たな出会いに遭遇する。
動けば動くだけ可能性が広がり、動けば動くほどクリエイティブな脳になる。
さて帰国の前日。
最後のアポイント先へ向かう。
いつもすてきな音楽が流れ、ショールームのセンスも最高に居心地がいい。
再会のハグをして、スマートフォンの充電をお願いし、肩からバッグを降ろす。
おや、何か変。違和感。
もう一度バッグをのぞく。
OMG! あるべきものが無い!
胃がギュッ!となり、
鼓動が高まり、
天を見上げ両手で顔を覆う!
パスポートやクレジットカードを納めていたポシェットがそこに無い!
警察への被害届、
日本から取り寄せる戸籍謄本、
ミラノ発住居地までの航空券。
あまりの難関さに在ミラノ日本国領事館担当者は
「予定通りの帰国は諦めた方がいい」と断言!
午後4時に判明した災難をクリアするまで14時間。
日本航空と領事館担当者の神対応によって、
スタッフが待つシャルル・ド・ゴール空港へ無事到着。
美しい装丁の「帰国のための渡航書」は、しばらく私の宝物になる。
注:海外旅行中、歩行や移動の車中などでスマートフォンを使用するのは危険です。