MOVEMENT|ムーブメント

Arriving

Arriving

rg 2017年1月号を読み返す。ページのタイトルは ”Flying”
イスラエルという未知の国に飛び、大地を走り
その2日間の印象を”WISDOM”と綴っていた。
命を授かった時から強烈なストレスを感じて生きて来たユダヤの人は
幸せになること、経済的に豊かになることにとてもポジティブだよ。
五十歳を超えて手に入れたオーガニックオリーブの生命力を
ファミリービジネスとして育て、
世界に発信するというイノベーティブな男の知恵と言葉。
彼のパッションは、南の島に店を持つ、のんびりとした私たちに
ホリスティック(*)なオリーブカルチャーを共に育てようという鍵を渡してくれた。
 
経験は面白い。恐る恐る出かけた最初の渡航とは違う。
1年をかけてオレアエッセンスのオリーブプロダクトの輸入を現実にし、
店頭でお客様にその価値をお伝えするには、やはり現地で学ぶ必要がある。
子供服のバイヤーとしてキャリアを積み、
現在はフード&リビングコーナーをマネージングするスタッフを連れ添った。
パリから目的地に向かう機上で、イスラエルの食事がどんなに美味しいか、
人々がどれほど美しいか、自然がどれだけ壮大か、
そしてブランド開拓者であるアブナー氏がどれだけお喋りで、
家族がどれだけ素敵かを自慢気に話す自分自身がいた。
 
テルアビブの空港。1年前と全く変わらぬアブナー氏が出迎えてくれた。
おおらかなハグを交わし、VOLVOジープに乗り込んだ途端、
早口でスケジュール変更が伝えられ
一気に150キロを北上、彼らのファームがあるゴラン高原に向かう。
陽が落ちるのが早い。
そのせいか、ハイウエイを縦横断に走る車の光が連なって美しい。
止まらないお喋りを必死で聞いているうちに、
ガリラヤ湖を望む丘の上のホテルに到着した。
 
翌朝の彼は、25年前に購入したという泥まみれのTOYOTA四駆でやって来た。
静かな雨が続く高原は、ガリラヤ湖と空の境を曖昧にして幻想的。
強い信仰を持つ人がここにいたならば、きっと胸に手を合わせ、天を拝み、
どこまでも清らかな空気に抱かれ、感謝きわまり涙を流すに違いない。
感極まる私たちを見て、
聖書に書かれているすべてのシーンがここにあるのだとアブナーがいう。
山ひだに積まれた小さな石壁は
三千年前にあったユダヤの村落の痕跡だと教えられた。
 
土はいじらない。オリーブツリーの枝をアイスクリーム状にカットして
成長する葉の中に太陽の光が届くよう手を添えるらしい。
オリーブを絞り、そこから採取する果実とオリーブウォーターを
コスメや洗剤に生かしていく
オレアエッセンスの本社ファクトリーに向かう。
ゴラン高原とガリラヤ湖の聖地を巡る旅の途中に、
世界中から多くの人が訪れるためビジターズセンターとしても機能している。
オリーブと、それに配合されるナチュラルエッセンスの香りの効果だろうか。
ピュアな空気が建物、空間、全てを癒す。
アメリカ、ロシア、シンガポール、韓国、様々な言葉が混ざり合う中、
みんなが嬉しそうにオリーブでできた黒色の洗剤で手を洗い、オイルを試食し、
プロダクト誕生の経緯に耳を傾け、稀有な商品の買物を楽しんでいる。
私たちに近づいてきたイスラエルに住むロシア系の女性は
こんなに皺だらけになっても肌には艶が必要なのよ、とチャーミングに笑い、
手に取ったスキンセラムを顔に擦り込み、そして私の手を握る。
思わず彼女の手をマッサージして、オキナワからきましたと挨拶すると
同行してきた孫を呼んで写真を撮って、と肩を寄せ合う。
なんでしょう、このほんわかな優しさ。
彼女の名はリリー。82歳。 The beauty is yours.
 
*ホリスティック(Holistic)ギリシャ語で「全体性」を意味する「ホロス(holos)」が語源。
そこから派生した言葉に、whole(全体)、heal(癒す)、health(健康)、holy(聖なる)…などがあり、健康-health-という言葉自体は、もともと「全体」に根ざしている。

 

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